あじさい会30年の歴史の中で、現在の状況を想像できたでしょうか。新型コロナウイルス禍はまだ終息が見えていません。昨年度そして今年度も5月の総会は開催できず書面評決での審議となり、非常事態宣言発令で会場が使用できないため定例会は約半分しか開催できませんでした。
このような非常事態の中であじさい会は創立30周年を迎えましたが、記念行事としては本記念誌「あじさい会30年の歩み」の制作と記念講演を開催いたしました。記念講演は、多くの当事者、家族及び家族会を支援・指導されてきた白石弘巳先生をお招きして、市民にも広く呼びかけ9月11日(土)、時代に即した「コロナ禍に学ぶ当事者及び家族のあり方」をテーマに公開講演会を開催いたしました。
あじさい会は、1991年(平成3年)9月25日に発会式及び第1回総会を行いました。正式名称は「小金井市精神障害者家族会」です。私は1998年4月入会しましたので創立準備から創立とその後の7年間は実体験しておりません。会長は初代の猪俣龍三さんから1997年4月に二代目の浦和完次さんに代わっており、2000年7月13日の創立10周年行事には私も参加できました。
あじさい会創立の準備と創立そして10年間の歩みは、「創立10周年記念誌」に投稿された当時顧問の猪俣龍三さんの記事に詳しく報告されていますので、そのまま本記念誌に載せました。創立時のご苦労や思い、精神保健福祉医療政策の推移及び将来へのメッセージ等貴重な内容が具体的に記載されております。翌年度の2002年1月逝去されましたので遺稿とも考えられます。
猪俣さんは、「障害者基本法」の成立および「精神保健福祉法」の成立により精神障害者が法的に障害者として定義され、福祉対策が今後進むことに希望を見出されました。一方、あじさい会の生みの親・育ての親でもある保健所の統廃合問題に衝撃を受け、保健サービスの交代への懸念を抱いておられました。最晩年の猪俣さんの願望は小金井市に地域生活支援センターを開設することで、近隣施設の見学に私も同行しました。地域生活支援センターは2001年5月設立準備会を発足して検討を重ね、2002年4月開所に至りました。運営主体であるNPO法人小金井市精神障害者地域生活支援協議会に浦和さんが初代理事長に就任されました。現在は加藤了教さんが理事長を務めておられます。
創立20周年記念式典は2011年9月8日行われ、「創立20周年記念誌」が発行されました。本記念誌には浦和さんの投稿記事「思い出多い20年」を載せました。浦和さんはあじさい会発足時から深く関わられ、多くの人脈を通してあじさい会が市の福祉団体として登録され補助金が下りるために尽力されました。市の補助金は今でも活動の貴重な資金源になっています。また、浦和さんは地域での当事者間や家族との交流を深めるため2006年12月クリスマス・パーティーそして2007年8月バーベキュー・パーティーをあじさい会主催、つどいの会共催で実施しました。次年度からは地域の精神福祉関係者が実行委員会を編成して継続しましたが、福祉会館が2015年4月閉館されたことにより残念ながら休止せざるを得なくなりました。浦和さんは後輩会員に多くの示唆を残し2019年6月逝去されました。
2015年4月の福祉会館閉館は市内の福祉団体の集会に大きな打撃を与え、あじさい会は定例会の会場として障害者福祉センターの食堂をお借りして開催せざるを得なくなりました。新会場は市の北部に位置しており交通の便が良くないため高齢で足腰が弱い会員は定例会に出席することが困難になりました。現在、新福祉会館及び市庁舎の建設計画が進められていますが、早期に完成することが望まれます。
この30年間で、諸施策や新薬の開発により精神障害者の環境は改善されました。厚生労働省は2011年7月精神疾患を、がん、脳卒中、心臓病、糖尿病と並ぶ国民の「五大疾病」と位置づけ重点対策を行うことを決め、また、障害者差別解消法が2016年4月施行され、小金井市障害者差別解消条例が2018年6月全会派一致で可決、2018年10月施行されました。しかしながら、法令の整備が進み「三障害一元化」が謳われておりますが、精神障害者は他障害と比べてまだ格差があります。精神障害者が家族から独立し安心・安定した生活・就労するために、今後も、みんなねっと、東京つくし会及び地域社会と協力して格差の是正に取り組んでいく必要があります。
今般の新型コロナウイルス禍は平常時には見えていない問題が浮き彫りになり、そこから学んだことも多くあります。精神科医療の改革、考えが異なるものを排除しない・差別しない、テレワーク・オンライン化、地域包括ケアシステムの推進などを地域に定着していくことが今後求められると思います。
あじさい会は、会則「相互の交流を図り、精神障害者の回復と社会復帰の促進を目的として「交流・親睦、学ぶ、働きかける」を基本に活動しています。先輩諸氏が築いた歴史を財産に、今後も取り組んでまいりたいと思います。